おはようございます。ワラベシンです。
以前このブログで【エビデンス】に関して少し触れさせていただきました。
今回は各種のガイドラインについて書いていきます。
結論:ガイドラインを参考に個別性のある治療アプローチを行うことが重要
そのことを念頭に置いたうえで、読んでいただければと思います。
はじめに:エビデンスとは
日本語に訳すと「根拠」であったり「証拠」となります。
根拠のある医療(EBM)とは【臨床研究によるエビデンス、医療者の専門性・熟練と患者の価値観の3要素を統合することで行われる医療】(Guyattによる定義)とされています。
また Strausらはこれに「状況」を加えた4要素を提唱しています。
エビデンスというと研究などに基づいたもののみと考える方が多いのですが、医療者の経験や患者の価値観も含まれることは忘れてはならない点です。
ガイドラインとは
日本語に訳すと「指針」となります。
医療における診療ガイドラインとは【診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその相対評価、益と害のバランスなどを考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書】となります。
簡単に言うと【適切な臨床判断を手助けする体系的な文書】だと思ってください。
診療ガイドラインの役割は何?
役割の例 |
①患者(および家族)と医療者の説明・理解・意思決定の支援 |
②さまざまなプレイヤーのコミュニケーションの起点 ・患者(家族)ー 医療者 ・患者間 ・医療者間 |
③エビデンス診療ギャップの改善 |
④新人教育の資料 |
⑤医療者の生涯教育 |
⑥Web上情報キュレーション時の参考資料 |
中山健夫:診療ガイドライン:現状と今後の展望.2009 より
リハビリテーションだけでなく、医療行為を行うにあたって説明と同意は絶対的に必要なものです。主な役割としましては、やはり①の「説明」であったり「意思決定」のツールかと思います。その他にも新人教育であったり、生涯学習にも用いられます。
診療ガイドラインの見方
ガイドラインには【エビデンスレベル】と【推奨グレード】という単語が出てきます。
エビデンスレベル
これは【研究論文の研究デザインをもとに、科学的な信頼性の水準がどの程度あるかを判定するもの】です。表にすると以下になります。
エビデンスレベル | 内容 |
Ⅰ: | システマティックレビュー/RCTのメタアナリシス |
Ⅱ: | 1つ以上のランダム化比較試験による |
Ⅲ: | 非ランダム化比較試験による |
Ⅳa: | 分析疫学的研究(コホート研究) |
Ⅳb: | 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究) |
Ⅴ: | 記述研究(症例報告やケースシリーズ) |
Ⅵ: | 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見 |
※Minds診療ガイドライン作成の手引き 2007.医学書院 より
何やら難しい単語が並んでいますが、ひとまず「Ⅰが一番信頼性が高くて、Ⅵが一番信頼性が低い」くらいで覚えていただければいいと思います。
推奨グレード
こちらは【標準的な臨床導入の推奨の程度を段階化したもの】です。こちらも以下の表をご覧ください。
推奨グレード | 内容 |
A | 強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる |
B | 科学的根拠があり、行うよう勧められる |
C1 | 科学的根拠はないが、行うよう勧められる |
C2 | 科学的根拠がなく、行わないように勧められる |
D | 無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる |
※ Minds診療ガイドライン作成の手引き 2007.医学書院 より
ここで一つ注意すべき点があります。例えばグレードAは【~行うよう強く勧められる】と記載されています。つまり絶対に守らなければならないものではなく、あくまでも推奨しているというスタンスです。
エビデンスレベル=推奨グレードなの?
結論から言うと必ずしもイコールではありません。
推奨グレードはエビデンスレベルが基礎ですが、①和が国の保険体系、②関連学会等の推奨グレード、③発行元の戦略が加味された総合判断によってきめられています。
そのため、ほかの国では推奨される治療も、日本では推奨されていないといったことなどが起こりえます。
また逆に、ガイドラインを見ると推奨されていることも、引用されている文献を確認すると、エビデンスレベルの低い論文が使われていることもあります。
そのためガイドラインに記載されいることを全てうのみにはせず、引用文献を確認し、どのような方に、どのくらいの期間介入を行ったのか、などは見ておく必要があると思います。
最後に
ガイドラインは数多くの論文を参考・引用し作成されていますが、発行された時より数年前の論文が利用されています(本が出版するまでは時間がかかりますから・・・)。
つまり発行された瞬間には、いや発行された時にはすでに古い情報となっています。
やはり日ごろから論文検索を行うなどして、最新の情報にアップデートしていくことは重要となります。
また「うちは○○療法をやっている」、「ここは○○セラピーを推奨している」といった病院や施設もあると思います。
そういった考えをすべて否定するつもりはありません。
しかし、「○○(だけ)をやっている」であったり、それにこだわるあまり、「その治療が当てはまらない方はしょうがない」といったことになっていないかを、治療を受けている患者・利用者側がきちんと把握する必要があると思います。
いわゆる手技は大事ですが、あくまでも選択肢の一つに過ぎません。
治療を行う側の方はもちろんですが、治療を受ける側の皆さんも自分から情報をつかみに行く姿勢が大事だと思います。
その人に合った個別のリハビリテーションの提供を常日頃から心がけていきたいものです(自戒もこめて・・)。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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