おはようございます、ワラベシンです。
私が勤める回復期病棟は、365日体制でリハビリテーションを提供しています。
個人が算定できる単位数の問題もあり、週1~2日は休むので、休みの日は他のスタッフに自分の担当患者さんを診ていただくことになります。

他のスタッフに診てもらうことは何か利点があるの?
今回はそのようの疑問にお答えします。
・担当スタッフが見落としていたことに気づく可能性がある
・実践の中で気づいたことを伝えられる→アドバイスにリアリティーが出る
回復期病棟とは
命の危険を脱するための急性期の治療を終え、自宅や地域・社会に戻ってからの生活を少しでも元に近い状態に近づけるためのリハビリテーションを専門に行っています。
大きな特徴は下記3点になります。
②1日最大9単位=3時間のリハ(疾患による)
③365日体制(盆や正月はありません!)
医療従事者側からすると【 病棟基準 】のことなども必要ですが・・。
詳しく知りたい方は 回復期リハビリテーションnetの記事 であったり、 回復期リハビリテーション病棟協会のHP をご覧ください。
私の経験した具体例
シーン①:装具の選定・作製について
50歳代の軽度の左片麻痺の方(Aさん)に、どの装具を使用するか悩んでいる後輩(入職2年目)がいました。

いろんな装具を試しているけど、結局どれがいいのかわかりません
上記のように相談され、後輩が休みの日に介入させてもらいました。
麻痺自体は軽く、足首を上にあげることも可能でした。しかし装具なしでの歩行時は左足をついた後反張膝がみられ、「もう少しきれいに歩きたい」と言われました。
そこで装具はGSDを使用し、ゲイトジャッジシステムという歩行分析の機械を使い、Aさんの歩行分析を行いました。
装具の調整をすると反張膝は減少し、スムースに歩くことができました。また分析結果も改善していました。
本人からも「これなら歩きやすい」、「ここの波ができたらいいね(分析結果について)」など受け入れは良かったです。
しかし、介入終了時に「できれば退院するときはこれ(装具)は使いたくない」といった発言もありました。
その場では明言はせず終了し、後日後輩と話しました。
後輩と脳画像やAさん個人の情報などを再度確認すると以下のことが整理できました。
②本人のこれまでの生活や話などから金銭的な余裕はある可能性が高い
③入院から間もないが身体機能は高い。また脳画像などから今後もよくなる可能性が高い
①退院時に装具を使いたくないのであれば、むしろ入院中に治療目的をベースにした装具を活用する方が良いと考えました。
②短下肢装具の作成には、一度10万円前後の金額を支払ってもらう必要がありますが、Aさんの金銭状況を考慮すれば、きちんと説明をすれば可能だと考えました。
③50歳代と若く、脳画像などから今後も身体機能は改善する可能性が高いと判断しました。
上記3点を考慮し、【 治療用としてGSDを作製 】し、【 退院時には装具なしで歩くことができるのを目標 】としてDrに相談し、その日は解散しました。
翌日後輩の介入に私が同席し、装具の作製のことをAさんに提案しました。金銭的な面で少し渋い顔をされましたが、保険制度の説明などを行い、なんとか了承を得ることができました。
その後、自分用の装具を使った歩行練習や個別の筋力トレーニングなどをおこない、Aさんは退院時に装具を使用することなく歩けるようになりました。
装具についてわからない方は下記の記事も参考にしてください
シーン②:離床拒否がある患者さんの対応

腰痛があって、なかなか離床が進まないんです
このような相談を後輩(入職1年目)から受けました。
この方(Bさん)は圧迫骨折で入院された70歳代の女性の方でした。
後輩は離床するように促しますが、痛みが強く拒否されるため、結局ベッドサイドで関節可動域運動を行うことがほとんどだとのことでした。
私の職場では On The Job Training(以下OJT)の実施が許可されており、後日後輩と一緒に介入に入らせていただきました。
まずは、どういった動かし方をするときに痛いのかといったことを問診しました。しかし「とにかく動かしたら痛い」としか返答がなく、部位の特定は困難でした。
Bさんに了承を得て私が全体の関節可動域運動を行いながら、これまでの生活などの話を3人でしていました。
体を動かしていると、椅子に座れる程度の足の曲げ伸ばしは行えることがわかりました。しかし体をひねる動作では顔をしかめる場面がありました。
また、これまでの生活から、元々家族や友人と出かけることが多かったことがわかりました。
その場でBさんに以下のことを伝えたうえで、車椅子に移ることを提案しました。
②けれども腰をひねるような動かし方は痛いみたいだからやめておいた方がいい
③車椅子に移ることができたら、外出などもできるし気分転換になる
①は「とにかく動かしたら痛い」ということはないということを認識してもらうために伝えました。
しかし②で伝えたように、痛みがあることは受け入れました。【 こいつには何言っても無駄 】などと思われると修復は難しいです。
③に関してはそのまま伝えたうえで、気分が悪くなったり、痛みが強くなるようであればすぐにベッドに戻ることを伝えました。
最初はしぶっていましたが、何かあればしっかりサポートする意思を伝えることで了承が得られました。
まず、後輩と2人介助で、腰をひねらないように注意しながらベッドに座ってもらいました。
次に、私がBさんの背中を支えている間後輩が靴を履かせました。
最後に、腰をひねらないように道具も使いながら、2人介助でゆっくりと車椅子に移りました。
ひとまず車椅子に移れたことを3人で喜んで、他のスタッフがいるところに顔を出しに行きました。
そこで看護師さんに「Bさんが起きてる!」や「しっかり座れてていいですね!」などと声をかけていただき、Bさんも嬉しそうでした。
その後疲れてきたとのことでベッドに戻りました。
車椅子に起きていた時間は15分ほどでしたが、「たまには起きてみるのもいいものね」と言われたので、「今度は花壇に花でも見に行きましょう」と伝え、その日の介入は終わりました。
数日後、後輩にBさんの様子を尋ねると「痛みの訴えはありますが、少しの時間だけでもと起きてくれるようになりました」と伝えてくれました。
その後少しずつ離床時間が増えて体力がついたBさん。
リハにも協力が得られるようになり、最後は杖をついて歩けるようになり退院されました。
複数担当制における先輩・上司の役割
必ずしも上記のようにすべてがうまくいくわけではありません。
しかし担当セラピストの話だけでは分からないことも多くあり、実際にリハに入ってわかることは非常に多いです。
また【 担当のスタッフは頑張ってくれているから・・ 】といいたいことを遠慮してしまう患者さんもいます。
チームの中で先輩にあたる立場の人は、ノウハウを教えることも大事ですが、【 人としての関わり方 】を実践の中で示す必要があります。
関わり方ひとつで患者さんが変わるなんてことはよくあります。すぐにできるものではないため、時間をかけて伝え続けましょう。
言葉だけでは伝わらないこともあるので、その場合はOJTで実践している場面をみたり、見せたりしていきましょう。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ
山本五十六さんの名言
まとめ
現在(2020年3月末)、理学療法士の人数は年間に約1万人のペースで増え続けています。
すると職場のスタッフの半数が経験年数3年目以下ということもあるでしょう。
複数担当制のなかで先輩・上司に当たる人の役割は多岐にわたります。
まずはお互いに気づいたことを言い合える関係・風土づくりを行いましょう。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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