脳卒中治療ガイドライン2021 原稿案 【運動障害・ADL障害】

リハビリ・医療関係

こんにちは、ワラベシンです。

前回比引き続き脳卒中の治療ガイドラインから気になったところを解説していきます。

今回は、亜急性期以降の障害に対する治療とリハビリテーションから【運動障害・ADL障害】をピックアップします。

結論
ロボットやVRの躍進と共に、テレリハビリテーションの文言が出現

運動障害

以下『脳卒中治療ガイドライン2021(仮)』原稿案 

より推奨文の抜粋

1.脳卒中後の運動障害に対して、課題に特化した訓練の量もしくは頻度を増やすことが勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)。

2.自立している脳卒中患者に対して、集団でのサーキットトレーニングや有酸素運動を行うよう勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)。

3.脳卒中後の運動障害に対する薬物療法の有効性は、確立していない(推奨度 C エビデンスレ
ベル中)。

課題に特化した運動療法は今後も必須

RCTのメタ解析より、反復した課題特化型のリハビリテーション訓練は標準的な理学療法あるいはプラセボ群に比べて上肢機能、歩行距離、歩行能力を改善させることが示されて
おり、その改善が発症後 6 か月まで持続し、転倒等の有害事象が見られないことも確認された と報告されています。

山に行くのに、海に行く準備はしませんよね?

それと同じで、その人の課題・目標を細かく設定したうえで、その目標に沿った介入が今後も重要になりそうですね。

ただ一点注意が必要な点があります。

それは「歩けるようになるために歩く練習を行う」といって、お散歩リハにならないように気をつけましょう!

お散歩だけならリハ職でなくてもできます。

個々人に合った評価・検証を行い、プログラムを流動的に変更しましょう。

自立度の高い方へは、集団でのサーキットトレーニングを!

異なる運動種目を組み合わせて身体の各部を訓練するサーキットトレーニングを集団で行うと、歩行距離、速度、バランス機能が有意に改善されることが報告されています。

ご存じの方が多いと思いますが、サーキットトレーニングは筋トレなど高強度のワークアウトを行いつつ、有酸素運動もメニューに取り入れたトレーニング方法です。

異なる運動を組み合わせることで、効果に偏りがなく、全身を鍛えることができます。

高強度の運動も含むため、ある程度自立度の高い人ではないと難しいですが、生活期では集団での運動の際取り入れていきたいトレーニングです。

運動障害に対する薬物療法の有効性は、確立していない

脳卒中後の歩行不能患者に対して、レボドパとカルビドパの合剤であるコ-カレルドパを作業療法と理学療法に加えて 6 週間投与したところ、それを投与しなかった群と比較して歩行機能の改善が有意に大きくなることはなかったという報告があります。

そのほかの報告も有意差のある改善は認められなかったという報告が多いのが現状です。

【再生医療】という言葉が聞かれだして何年か経ちましたが、まだ有意に効果のある薬物が出るには時間がかかりそうです。

しかし、リハの効果を高めるような薬物が出てくることは、医療・介護費用の削減にもつながります。

今後も期待したい分野であることには変わりないですね。

ADL障害

以下推奨文からの抜粋です。

1.運動療法を行うことは、ADL を向上させるために勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)。
2.ADL を向上させるために、麻痺側上肢を強制使用させる訓練、課題志向型訓練、鏡像を利用した訓練、ロボットを利用した訓練を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中)。
3.感覚刺激やバーチャルリアリティを利用した訓練を行うことを考慮してもよい(推奨度Cエビデンスレベル中)
4.上肢運動訓練に反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulataion:

rTMS)、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)、電気刺激療

法を併用することは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中)
5.テレリハビリテーションを含めた在宅リハビリテーションを行うことは妥当である(推奨度Cエビデンスレベル中)

脳卒中治療ガイドライン2021 原稿案より

運動療法はADLの向上に必要

運動療法が ADL を改善させることは、システマティックレビューで確認されています。

寝転んでさすさすもみもみするだけでは、ADLは改善しません。

動きましょう。

ADLの向上にはCI療法やロボットなど組み合わせが重要

CI療法や課題志向型訓練、ロボット療法などはシステマティックレビューやRCT論文がどんどん出てきています。

特に人口減少の一途をたどる日本では、ロボットの活用は必須になるでしょうね。

これらを別々にとらえずに、組み合わせることでより高い効果が期待できるのではないでしょうか。

しかし、

ロボットを用いた下肢運動訓練はADL の改善をもたらさなかったという報告もあり、PTとしては頑張りどころですね。

バーチャルリアリティは認知的なADLを改善する?

バーチャルリアリティを用いたリハビリテーション訓練が、認知的な ADL を改善することを報告したランダム化比較試験があります。

VRの特徴は目の前にある現実とは違う現実を体験できることです。

なので例えば、歩けないでもVRを利用して仮想空間を歩くことで、歩くための神経回路の発火が起きて、歩行の獲得に一役買うことがあるかもしれませんね。

しかしながら、通常のリハビリテーション訓練に対するVRの優越性を示すことができなかったランダム化比較試験も複数存在しており、まだまだ今後の研究が必要な分野でもあります。

電気刺激療法は併用すると効果がないのか?

複数のランダム化比較試験が、電気刺激療法の ADL 改善効果を示しています。

しかし、ロボット療法や課題志向型訓練などとの併用では、ADL の有意な改善を確認できていません。

電気刺激の機器の調整だけではなく、ロボットや課題の難易度調整となると、個別性がかなりあります。

地道に症例報告レベルから研修を重ねていくしかないでしょうね。

テレリハビリテーションは通院リハと同等にADLが改善する?

ランダム化比較試験によって、入院中からの在宅リハビリテーションの指導および退院後の在宅リハビリテーションの施行は ADL を改善させることが示されています。

その中でも、テレリハビリテーションを導入することで、通院リハビリテーションと同等に ADL が改善することも報告されているようです。

原著を読めていないので何とも言えませんが、もしそうであれば、これからのウィズコロナの世の中において、テレリハビリテーションの重要性はますます強くなることが予想されますね。

まとめ

ADLの改善には量が必要なことには変わりがなさそうです。

在宅リハでは運動に係れる時間は限られています。

日ごろの身体活動量をどれだけ高められるかが、改善のカギになるでしょう。

そのためのツールとしてロボットやVRなどをうまく利用することが、これから求められそうですね。

最後に、ガイドラインはあくまでも【治療選択の指針】ということを理解したうえで、ご自身の対象者の方に利用していきましょう!

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今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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